お稽古の持ち物に「扇子」と書かれていて、家にある夏の扇子を持っていこうとした人は、たぶん少なくありません。茶道で使うのは茶席用の、ずっと小さい扇子です。茶扇子(ちゃせんす)と呼ばれます。
帛紗(ふくさ)のように色がきれいに決まっている道具ではないのに、「男性用」「女性用」「○○流用」と分かれて売られているので、どれを買えばいいのか迷いやすい道具でもあります。この記事では、何がどこまで決まっているのかを整理します。
帛紗の色の決まりについては帛紗(ふくさ)の色とサイズにまとめました。
あおぐための道具ではない
まず押さえておきたいのは、茶席の扇子は涼をとるための道具ではないということです。お茶席で開いてあおぐことはありません。
使うのは、閉じたままの状態です。席に入るとき、ご挨拶をするとき、道具を拝見するときなどに、膝の前に置いたり、手に持ったりします。自分と相手のあいだに置いて境をつくる、結界のような意味があると説明されることが多い道具です。
開かない前提の道具なので、夏扇子より小さく、骨の数も少なく作られています。そのぶん、ふだん扇子を使い慣れている人でも、開こうとすると意外と開きにくい作りになっています。
お稽古の持ち物で「扇子」と書かれていたら、まず茶席用の小さいもののことだと考えてください。夏用の扇子で代用はしません。
大きさは「寸」で書かれている
茶扇子の大きさは、閉じたときの長さを「寸」で表すのが一般的です。お店の表示では「五寸」「六寸」「七寸五分」のように書かれています。一寸はおよそ3センチなので、五寸ならおよそ15センチ、六寸ならおよそ18センチが目安です。
そして、女性用のほうが小さく、男性用のほうが大きいという点は、どの資料でもおおむね一致しています。女性用に五寸前後、男性用に六寸前後をあてる説明がよく見られます。
ただし、正直に書いておきたいことがあります。具体的な数字は資料やお店によってずれます。入門向けの解説記事では男性用がおよそ20センチ、女性用がおよそ17センチと書かれていることもありますし、男性用として七寸五分(およそ22.7センチ)のものを扱っているお店もあります。
「女性は必ず五寸」「男性は必ず六寸」と言い切れるほど、寸法はひとつに決まっていません。数字で覚えるよりも、売り場の「男性用」「女性用」の表示で選ぶほうが確実です。
流派で決まっているのは、寸法より「使う場面」
扇子は「裏千家用」「表千家用」として売られていることがあり、三千家の道具をまとめた記事でも、寸法の目安が流派で違うことがある道具として扱われています。実際にお店の分類でもそう並んでいます。
いっぽうで、帛紗のように**「この流派は何寸」とはっきり公表された表がある道具ではありません**。流派名で売られているものを選べば間違いは少ない、という程度に受け取っておくのが安全です。
それよりはっきり違うのは、どの場面で、どこに置くかという扱い方です。席入りのとき、ご挨拶のとき、拝見のとき、どのタイミングで扇子を前に置くかは、流派とお点前で変わります。ここはお稽古で先生の動きを見ながら覚えていく部分で、本やこの記事で先に覚えておけるものではありません。
流派ごとに最初に揃える道具は、裏千家で最初に揃える道具、表千家で最初に揃える道具、武者小路千家で最初に揃える道具にそれぞれまとめています。
買う前に先生に確認したいこと
扇子は小さな道具ですが、買ってから「それではない」と言われると買い直しになります。買う前に、次のことを先生に聞いておくと確実です。
- 扇子は自分で用意するか(教室でまとめて用意してくれることがあります)
- 指定の寸法や、指定のお店があるか
- 柄や塗りに決まりがあるか(無地に近いものが無難とされますが、ここも教室によります)
とくに1つめは、帛紗や懐紙と同じで、教室の方針で分かれるところです。初心者セットに扇子が入っていることもあるので、セットで買うつもりのときも一度確認しておくとよいです。
持ち運びは、帛紗ばさみや数寄屋袋に、帛紗・懐紙といっしょに入れます。扇子は細長いので、袋の大きさを選ぶときは扇子が入るかどうかで見るとよいです。袋の選び方は古帛紗(こぶくさ)とはにも少し書いています。
まとめ
- 茶席の扇子は、あおぐためではなく、閉じたまま前に置いて使う道具
- 大きさは「寸」で表され、女性用のほうが小さく、男性用のほうが大きい
- 具体的な寸法は資料やお店でずれるので、数字ではなく「男性用/女性用」の表示で選ぶ
- 流派名で売られているものもあるが、帛紗の色のようにはっきり決まった表があるわけではない
- 置く場面や扱い方は流派と先生で変わるので、最後は必ず先生に確認する