お正月が近づくと、和菓子屋さんの店先に、薄紅色がうっすら透けた白いお菓子が並びます。**花びら餅(はなびらもち)**です。
はじめて見ると、まず驚くのがごぼうが挟まっていること。甘いお菓子に、なぜ根菜が入っているのか。この記事では、そのあたりも含めてまとめます。
どんなお菓子?
花びら餅は、この時期にしか出回らないお菓子です。姿はおおむね次のようになっています。
| 部分 | 中身 |
|---|---|
| 外側 | 白い求肥(ぎゅうひ)や餅。半分に折った形 |
| 中の色 | 紅色の菱餅(ひしもち)。白い生地ごしに透けて見えます |
| 餡(あん) | 白味噌の餡。甘さの中に味噌の風味があります |
| 添えられるもの | 甘く煮たごぼうが、一本か二本 |
味噌の餡とごぼう、という取り合わせは和菓子の中でも珍しいものです。食べると、甘さのあとに味噌の塩気がきて、ごぼうの歯ざわりが残ります。
淡い紅が白の下から透ける見た目も、このお菓子ならではです。雪の下から春が透けて見えるようだと言われることがあります。
なぜ、ごぼうが入っているのか
ここは慎重に書きます。
花びら餅の成り立ちについては、宮中で新年に食べられていたものに由来するという説が、広く知られています。固いものを食べて長寿を願う習わしがあり、そこで用いられていた食材のなごりがごぼうだ、という説明を目にすることがあります。
ただ、この由来には諸説あり、細かい経緯をここで断定することはできません。「そういう言い伝えがある」という受け止め方にとどめておくのが正確です。
お茶席では、お菓子について席主に尋ねるのが歓迎されることがあります。「このお菓子の銘は」と聞けば、その日の趣向とあわせて話してもらえます。由来を自分で語るより、聞くほうがずっと楽しい場です。
いつ、どこで買えるか
花びら餅はお正月前後の、ごく短い期間だけ作られます。多くの和菓子屋さんでは年末から一月のうちに並び、時期を過ぎると店先から消えます。
- 和菓子屋さんの店頭:年末から一月にかけて。お店によって扱う期間が違います
- 予約:人気のあるお店では、年内に予約を受け付けることがあります
- お取り寄せ:冷蔵・冷凍で届くものもあります
日持ちはしません。 求肥や餅のお菓子なので、買ったその日か翌日までにいただくのが基本です。お店の指示にしたがってください。
いただくときに気をつけること
花びら餅は主菓子(おもがし)にあたります。お茶席では懐紙にとって、菓子切りで切っていただきます。
ただし、このお菓子には少しコツがあります。
- 求肥がやわらかく、切りにくい:菓子切りを押しつけるより、ゆっくり沈めるように切ると形が崩れません
- ごぼうが長い:ごぼうごと切ろうとすると滑ります。無理に一度で切ろうとしないこと
- 手につきやすい:求肥は手にくっつくので、懐紙の上で扱うようにします
主菓子をどういただくか、菓子器をどう回すかは、流派と先生によって教え方が違います。ここに書いたのは、あくまで扱いやすさの話です。お稽古やお茶席では、先生の教えるとおりに、まわりの人にならってください。
いただき方の基本は主菓子と干菓子はどう違う?に、懐紙と菓子切りは懐紙の使い方と選び方・菓子切り(黒文字)の選び方にまとめました。
初釜との関わり
花びら餅は、初釜でいただくお菓子としてよく知られています。新年最初の席にふさわしい姿と、この時期にしか作られないという巡り合わせからです。
ただし、初釜で必ず花びら餅が出るわけではありません。何を出すかは社中や先生によって違い、別のお菓子が用意されることもあります。炉開きの席で出るものが社中によって違うのと同じです。
初釜そのものについては初釜に呼ばれたときの持ち物と服装をご覧ください。
お稽古に通っていなくても、和菓子屋さんで買って家でいただくことはできます。お正月に一度味わってみると、次に茶席で出会ったときの楽しみが変わります。
まとめ
- 花びら餅は、白い求肥に紅が透け、白味噌の餡とごぼうが入った新年のお菓子
- 宮中の習わしに由来するという説が知られているが、諸説あり断定はできない
- 年末から一月のごく短い期間だけ。日持ちしないので早めにいただく
- 主菓子なので、懐紙にとって菓子切りで。求肥は沈めるように切ると崩れない
- 扱い方も菓子器の回し方も、流派と先生で違う。席では先生とまわりにならう
- 初釜のお菓子として知られるが、必ず出るとは限らない。社中によって違う