お稽古道具を揃えるとき、懐紙と並んで最初に出てくるのが菓子切りです。小さなものですが、売り場には木のもの、金属のもの、鞘(さや)に入ったものが並んでいて、どれを買えばいいのか案外迷います。
この記事では、選ぶときの分かれ道だけを整理します。お菓子のいただき方そのものは主菓子と干菓子はどう違う?にまとめました。
菓子切りと黒文字は、同じもの?
ほぼ同じものを指しますが、言葉の成り立ちが違います。
- 菓子切り:お菓子を切り分けて口に運ぶ道具の、総称です
- 黒文字(くろもじ):クロモジという木から作った楊枝(ようじ)のこと
クロモジはクスノキ科の落葉低木で、枝に独特の香りがあります。その枝を削って作られたものが黒文字です。名前の由来には諸説あり、樹皮の黒い斑点を文字に見立てたものと言われますが、ここは断定できるところではありません。
いまは金属や塗りのものも「菓子切り」と呼ばれるので、木のものだけを黒文字と呼ぶと覚えておくと混ざりません。
使い捨てと、自分のものを持つ場合
まずここが大きな分かれ道です。
お茶会や席によっては、黒文字が人数分用意されています。 お菓子と一緒に出され、使ったら持ち帰るか、そのまま置いていきます。この場合は何も持っていなくても困りません。
一方、お稽古では自分のものを一本持っておくのがふつうです。毎回のことなので、鞘に入れて帛紗ばさみに常備しておけば、忘れずに済みます。
つまり**「席で配られる使い捨ての黒文字」と「自分で持ち歩く菓子切り」は別物**として考えるのが分かりやすいところです。家でお客さまにお菓子を出すときには、使い捨ての黒文字を人数分添えると形になります。
素材で選ぶ|木と金属
自分用の一本を選ぶときの、いちばんの判断どころです。
| 木(黒文字) | 金属(ステンレスなど) | |
|---|---|---|
| 持ち味 | 使うたびに木の香りが立つ | 丈夫で、長く使える |
| 道具への当たり | やわらかい | 器に当たると音が出ることがある |
| 手入れ | 濡れたままだと黒ずむ | 洗えて、乾きも早い |
| 向いている人 | 香りや風情を楽しみたい人 | 手入れを簡単にしたい人 |
柄に漆を塗った塗りの菓子切りもあります。見た目が整っていて、鞘とセットになっているものが多く、持ち歩きやすい形です。
どの素材を使ってよいかは、教室によって考え方が違います。木のものを基本とする先生もいれば、気にされない先生もいます。流派による決まりというより、その教室のならわしの部分が大きいところです。買う前に一度聞いておくと確実です。
鞘(さや)つきを選ぶ理由
自分用に持つなら、鞘つきをおすすめします。理由は単純で、鞘がないと先が懐紙や帛紗ばさみの中を傷めるからです。
鞘つきを使うときの手順は、こうです。
- 使う前に鞘から抜く
- 抜いた鞘は、懐紙の下か、自分の膝の脇に置いておく
- 使い終わったら、先を懐紙の端で拭ってから鞘に戻す
鞘を置く場所は、席によって作法が決まっていることがあります。ここも先生の教えるとおりにしてください。
鞘がついていない菓子切りを買ったときは、別売りの楊枝入れを用意すると同じように扱えます。
手入れと、持ち歩き方
長く使うためのことを、最後にまとめます。
木のものは、水につけっぱなしにしないことがいちばんです。使ったらすぐ拭き、よく乾かしてからしまいます。濡れたままだと黒ずみ、においも残ります。
金属のものは洗えますが、鞘が木や漆のときは鞘だけは濡らさないようにします。鞘は拭くだけにとどめます。
持ち歩くときは、帛紗ばさみや数寄屋袋に、帛紗・扇子・懐紙と一緒に入れます。懐紙に挟んでおくと、取り出すときに一緒に出せて手早く済みます。
先が欠けたり、木が黒ずんできたりしたら買い替えどきです。消耗品と割り切って、気持ちよく使えるものを持っておくほうが、結局は気が楽です。
まとめ
- 「黒文字」はクロモジの木から作った楊枝のこと。菓子切りはその総称
- お茶会では席で配られることがある。お稽古では自分のものを一本持つ
- 木は香りがあり当たりがやわらかい。金属は丈夫で手入れが楽
- どの素材でよいかは教室によって違うので、買う前に聞いておく
- 自分用なら鞘つきを。鞘がないと懐紙や袋の中を傷めます
- 木は濡れたままにしない。鞘が木や漆なら鞘は拭くだけ
- 先が欠けたら買い替えどき。消耗品と考えてよい