十一月に入ると、お稽古場の空気が少し変わります。畳の一部が開いて、そこに火が入る。「炉開き(ろびらき)」です。
茶道をはじめたばかりの人には、何が起きているのか分かりにくい行事かもしれません。この記事では、炉開きで何が変わるのかを、はじめての人に向けて整理します。
炉開きとは、夏の道具から冬の道具への切り替え
茶道では、お湯を沸かす場所が季節で変わります。
- 風炉(ふろ):畳の上に置く、持ち運べる炉。暖かい季節に使います
- 炉(ろ):畳を切ってしつらえた、床に埋まった炉。寒い季節に使います
炉開きは、この風炉から炉へ切り替える日のことです。夏じゅう使っていた風炉を片づけ、炉に火を入れます。
一般に、十一月から炉、五月から風炉、という区切りで語られます。ただし実際に何日に行うかは、先生と社中によって違います。お稽古場の都合もあるので、日取りは案内を待つのが確実です。
なぜ火の場所が変わるのか
理由は単純で、お客さまに気持ちよく過ごしてもらうためです。
暑い季節は、火が遠いほうが涼しく感じられます。だから風炉は、客席から少し離れた畳の上に置かれます。
寒い季節は逆です。炉は客席に近い位置で、床に埋まっています。火が近く、湯気も立ちのぼって、あたたかく感じられます。
同じお点前でも、炉と風炉では道具の置き方や手順が変わります。十一月になると「習い直し」のような気持ちになるのは、そのためです。
炉と風炉では、お点前の手順がかなり変わります。切り替わったばかりの時期に戸惑うのは当たり前のことで、長く続けている人も毎年あらためて習います。焦らずに、先生の言うとおりに手を動かしていけば大丈夫です。
「茶人の正月」と呼ばれる理由
炉開きの時期は、茶人の正月と呼ばれることがあります。
ひとつは、炉に切り替わることで一年のお茶が新しくはじまる、という区切りの意味。
もうひとつが「口切り(くちきり)」です。その年に摘んで茶壺に詰めておいた新しい葉の封を、この時期に切って、茶臼で挽いて使いはじめます。新しいお茶をいただきはじめる日でもあるわけです。
口切りを伴う茶事は、一年でもとりわけあらたまった席とされています。社中によっては、炉開きとあわせて行われます。
炉開きでいただくもの
炉開きの席で出されるものには、この時期ならではのものがあります。
亥の子餅(いのこもち):炉開きを亥(い)の日に行う習わしがあり、そのときに亥の子餅をいただくことがあります。猪の子どもをかたどった、この時期だけの和菓子です。
ぜんざい:炉開きにぜんざいを振る舞う社中もあります。
どちらも「必ず出る」というものではありません。何が出るかは社中によって違います。出てきたものを、その場で楽しめば十分です。
お菓子のいただき方は主菓子と干菓子はどう違う?にまとめました。
はじめて炉開きの席に出るとき
あらたまった席ではありますが、身構えすぎなくて大丈夫です。持ち物と服装の考え方は、初釜とほぼ同じです。
- ふだんのお稽古道具(帛紗・扇子・懐紙・菓子切りなど)
- 白い靴下、または白足袋。履き替え用に
- 会費が必要かどうかは、前もって確認しておく
詳しくは初釜に呼ばれたときの持ち物と服装にまとめてあります。炉開きも同じ考え方で用意できます。
服装や持ち物で迷ったら、先生に聞くのがいちばんです。 あらたまった席ほど、聞いておいたほうが当日ゆったり過ごせます。
まとめ
- 炉開きは、風炉から炉へ切り替える日。一般に十一月、日取りは社中による
- 火の場所が変わるのは、季節に合わせてお客さまに心地よく過ごしてもらうため
- 炉と風炉ではお点前の手順が変わる。毎年あらためて習うもの
- 新しいお茶の封を切る「口切り」とあわせて、茶人の正月と呼ばれる
- 亥の子餅やぜんざいが出ることがあるが、社中によって違う
- 持ち物と服装の考え方は初釜と同じ。迷ったら先生に確認を