お稽古を一年続けると、同じお点前を二通り習うことになります。炉(ろ)のお点前と、風炉(ふろ)のお点前です。
切り替わりの時期にいちばん戸惑うのは、「どこがどう違うのか」が整理できていないからかもしれません。この記事では、見た目・道具・動きの三つから違いを並べます。
いつ切り替わるのか、その日に何をするのかは炉開きとはにまとめました。ここでは、その先の中身を見ていきます。
まず、置かれる場所が違います
いちばん大きな違いはここです。
| 炉 | 風炉 | |
|---|---|---|
| 場所 | 畳を切って、床に埋め込まれている | 畳の上に置く |
| 動かせるか | 動かせない | 持ち運べる |
| 使う季節 | 寒い季節 | 暖かい季節 |
| 客席との距離 | 近い | 遠め |
炉は建物に備えつけです。畳の一部が外せるようになっていて、冬のあいだだけ開けて使います。夏は畳でふさぎ、そこに炉があることも分からなくなります。
風炉は持ち運べる道具です。畳の上に敷板(しきいた)を置き、その上に据えます。
同じ部屋が、季節によってまったく違う顔になります。
客席から見える景色が変わります
炉と風炉では、お客さんの目に入るものが違います。
炉のときは、火が客席に近く、釜から立つ湯気がよく見えます。炭の火が見える位置にあることもあり、暖かさが伝わります。
風炉のときは、火が少し離れた位置にあります。釜も炉のときより小さめのものが使われることが多く、全体に軽やかな印象になります。
これは「涼しく見せる・暖かく見せる」という考え方からきています。暑い季節に火を近づけない、寒い季節に火を近づける——理屈としては単純です。
茶室に入ったとき、畳のどこに火があるかを見ると、その日が炉の季節か風炉の季節かがすぐ分かります。床に埋まっていれば炉、畳の上に置かれていれば風炉です。
道具も入れ替わります
火の場所が変わると、まわりの道具も変わります。代表的なものを挙げます。
- 釜(かま):炉用と風炉用があります。炉用のほうが大ぶりなものが多く、風炉用は小さめです
- 柄杓(ひしゃく):炉用と風炉用で、合(ごう=湯をすくう部分)の大きさや、切止(きりどめ=柄の先)の削り方が違います。見た目が似ているので、買うときは用途の表示を確かめます
- 茶碗:寒い季節は深めの筒茶碗、暑い季節は浅く広い平茶碗が使われます
茶碗の季節による形の違いは家で使う抹茶茶碗の選び方にも書きました。
だから、お点前の手順が変わります
ここまで来ると、なぜ手順が変わるのかが見えてきます。
火の位置が変われば、体の向きも、道具を置く場所も、手を伸ばす方向も変わります。同じ「お湯をくむ」動作でも、炉と風炉では向きが違う、という具合です。
炉と風炉で変わるのは、おおむね次のようなところです。
- 道具を置く位置
- 座る向き、体の向き
- 柄杓の扱い
- 炭をつぐ手順
具体的にどこがどう変わるかは、流派によってかなり違います。 さらに、同じ流派でも先生によって教える順序や言い方が違います。この記事では「変わる場所」までにとどめます。手順そのものは、必ずお稽古で先生から習ってください。本やネットで覚えた手順が、通っている教室と食い違うことはよくあります。
切り替わりの時期を、どう過ごすか
十一月と五月、切り替わったばかりの時期は、長く続けている人でも戸惑います。半年ぶりだからです。
気の持ちようとして、覚えておくとよいことが三つあります。
毎年あらためて習うもの:一度で覚えきるものではありません。何年も続けている人が、毎年「ああそうだった」と思い出しながら手を動かしています。
先に全体像を見ておく:細かい手順の前に、火がどこにあるか、道具がどこに置かれるかを見ておくと、動きの意味が分かりやすくなります。
間違えても止まらない:切り替え直後に間違えるのは当たり前です。先生もそれを前提に見ています。
炉と風炉を一年のうちに両方経験すると、同じ部屋が季節で変わるということが体で分かります。それが分かるのは、一年通ったご褒美のようなものです。
まとめ
- 炉は床に埋め込み、風炉は畳の上に置く。これがいちばん大きな違い
- 炉は寒い季節で火が客席に近い、風炉は暖かい季節で火が遠め
- 釜・柄杓・茶碗も炉用と風炉用に分かれる。柄杓は見た目が似ているので表示を確認
- 火の位置が変わるから、置く場所・体の向き・柄杓の扱い・炭の手順が変わる
- 具体的な手順は流派と先生でかなり違う。必ずお稽古で習う
- 切り替え直後に戸惑うのは当たり前。毎年あらためて習うもの