家で抹茶を点てるのに、棗(なつめ)と茶杓(ちゃしゃく)はなくても困りません。缶から小さじですくえば、お茶は点ちます。
それでも揃えたくなるのは、一服の時間が整うからです。缶と小さじでは、どうしても台所仕事の続きになります。この記事では、お稽古の格は脇に置いて、家で毎日使う目線での選び方をまとめます。
棗と茶杓は、何をする道具か
まず簡単に。
棗は、薄茶用の抹茶を入れる器です。名前は植物のナツメの実に形が似ていることからきています。ふたをかぶせる形で、密閉はされません。
茶杓は、抹茶をすくう細長い匙です。竹を削って作られたものが一般的で、先のほうが反っています。
棗は保存容器ではありません。ふたはかぶせてあるだけなので、湿気もにおいも入ります。入れるのはその日に使うぶんだけにして、残りは缶のまま保存してください。保存の考え方は開けたあとの抹茶、どう保存する?にまとめました。
棗|素材で扱いやすさが変わります
棗は素材によって、値段も手入れの手間もかなり違います。
| 素材 | 扱いやすさ |
|---|---|
| 木に漆を塗ったもの | 本来の形。水に濡らせません。乾拭きで扱います |
| 樹脂(プラスチック) | 水で洗えます。お稽古用として売られているものもあります |
| 金属・陶器のもの | 製品によります。表示を確かめてください |
家で毎日使うなら、まず樹脂のものでも十分です。 洗えるというのは、思った以上に気楽です。漆のものは美しいのですが、扱いに気をつかいます。
形の基本は**黒塗りの中棗(ちゅうなつめ)**とされます。迷ったらこの形を選べば、見た目で浮くことはありません。大きさは中棗のほかに大棗・小棗がありますが、家で使うなら小さめで十分です。一度に入れるのは数杯分だからです。
茶杓|竹のものを一本
茶杓は竹製が一般的です。象牙や木のものもありますが、家で使うなら竹で十分です。
見るところは2つだけです。
- 削りの形:先のほう(櫂先=かいさき)が反りすぎていないもののほうが、缶や棗からすくいやすくなります
- 節(ふし)の位置:真ん中あたりに節があるものが一般的です。節のない「真の茶杓」などもありますが、家で使うぶんには気にしなくて構いません
竹の色は、白竹、煤竹(すすだけ)、ごま竹などいろいろあります。ここは好みで選んでよいところです。
茶杓一杯の量を覚えると、計量の手間がなくなります。薄茶なら茶杓で2杓ほどが目安です。いつも同じ茶杓を使っていると、だんだん体が量を覚えます。点て方は薄茶の点て方にまとめました。
水に濡らさない、が共通のきまり
棗も茶杓も、基本は水で洗いません。これだけ覚えておけば困りません。
漆の棗:水に濡らすと塗りが傷みます。使ったあとは、やわらかい布で内側の粉を拭き取るだけ。洗剤も食洗機も使えません。
竹の茶杓:水につけると反ったり、黒ずんだりします。使ったら、乾いた布でさっと拭くだけにします。
どちらも、湿気のない場所にしまうのが長持ちのコツです。茶杓は筒に入れておくと、先が欠けません。
抹茶の粉は油分がないので、拭くだけでほとんど落ちます。「洗わないと不衛生では」と感じるかもしれませんが、乾いた粉を乾いた布で拭き取るのが、この道具にとって正しい手入れです。
お稽古用に買うときは
ここまでは家使いの話です。お稽古で使う棗や茶杓を買うなら、話が変わります。
お点前で使う道具には、形にも扱いにも決まりがあり、流派と先生によって考え方が違います。棗の形、茶杓の節の位置、どんな場面で何を使うか——このあたりは教室で習うものです。
そもそも、お稽古では教室の道具を使うのが一般的なので、自分で買う必要がないことも多いはずです。買うなら、先生に一度相談してからにしてください。
家で使うものは、好みで選んで大丈夫です。気に入ったものを毎日使うほうが、結局は長く続きます。
まとめ
- 棗と茶杓はなくても点てられる。でもあると一服の時間が整う
- 棗は保存容器ではない。入れるのはその日に使うぶんだけ
- 家使いなら樹脂の棗が気楽。漆のものは水に濡らせない
- 形は黒塗りの中棗が基本。家で使うなら小さめで十分
- 茶杓は竹で十分。櫂先が反りすぎていないものがすくいやすい
- どちらも水で洗わない。乾いた布で拭き、湿気のない場所にしまう
- お稽古用は流派と先生で考え方が違う。買う前に相談を