茶筅を買うとき、売り場で隣に並んでいるのがくせ直しです。茶筅たて、茶筅休めとも呼ばれます。
「あったほうがいいのだろうか」「なくても困らないのでは」——ここで迷う人は多いはずです。この記事では、使う場合と使わない場合の考え方を並べ、そのうえで茶筅を傷めない扱い方と買い替えどきをまとめます。
洗い方と使いはじめの準備ははじめての茶筅の選び方と、長持ちさせる手入れにまとめました。ここではその先の話をします。
くせ直しは、何をする道具か
陶器や磁器でできた、山形のふくらみがある台です。洗った茶筅を穂先を下にしてかぶせ、乾かすあいだ形を保ちます。
茶筅の穂は、濡れると広がり、乾くと縮みます。濡れたまま放っておくと、縮むときに穂が内側へすぼまっていきます。これを繰り返すうちに、だんだん茶筅が「閉じた」形になり、点てにくくなります。
くせ直しは、乾くあいだ穂を外から支えて、広がった形のまま乾かすための道具です。
「使わない」という考え方もあります
一方で、くせ直しを使わない人もいます。理由はいくつかあります。
- 乾きが遅くなる:台にかぶせると穂の内側に湿気がこもりやすく、風通しの良いところに立てて干すほうが早く乾く、という考え方です
- 形を無理に保つ必要はない:茶筅は消耗品なので、使い切るまでの間だけ使えればよい、という割り切りです
- 場所を取る:道具が増えるのを好まない人もいます
どちらが正しい、という話ではありません。お稽古で使う茶筅なら、先生の教え方があるはずです。 道具の扱いは流派と先生によって考え方が違うので、お稽古用は教わったとおりにしてください。
家で使うぶんには、まず使ってみて決めるのがいちばんです。くせ直しがなくても茶筅は使えますし、あれば形は保ちやすくなります。迷ったら、茶筅を買うときに一緒に買っておくと、比べられます。
穂を傷めているのは、たいてい別のところ
くせ直しを使うかどうかより、日々の扱いのほうがずっと影響します。穂が早く傷む原因は、だいたいこの4つです。
| 原因 | どうなるか |
|---|---|
| 熱すぎる湯 | 竹が傷み、穂が折れやすくなります |
| 洗剤やたわし | 竹の表面が荒れ、穂先が割れます |
| 茶碗の底に強く当てる | 穂先が折れます。点てるときは少し浮かせて |
| 濡れたまましまう | カビとにおいのもと。乾かしきってから |
とくに多いのが、点てるときに茶筅を押しつけてしまうことです。穂先が茶碗の底に当たるほど力を入れても泡は立ちません。手首で振るだけで十分です。点て方は薄茶の点て方にまとめました。
使い終わった茶筅を、お湯につけたままにしないでください。長く浸けると竹が水を吸いすぎ、乾いたときに穂が反ります。振り洗いしたら、すぐ水気を切ります。
乾かし方の勘どころ
くせ直しを使う・使わないにかかわらず、共通するのはここです。
- 穂先を下に向けて水を切る:軸に水が残ると、そこから傷みます
- 風通しのよい場所に置く:戸棚の中より、出しておくほうが早く乾きます
- 直射日光に当てない:急に乾かすと竹が割れることがあります
- 完全に乾いてからしまう:箱や袋に入れるのは、乾ききってから
毎日使うなら、出しっぱなしにしておくのがいちばん乾きます。見た目が気になるなら、茶筅たてに立てておくと道具として様になります。
買い替えどきの見分け方
茶筅は消耗品です。どれだけ丁寧に扱っても、いつかは替えどきがきます。目安はこのあたりです。
- 穂が折れてきた:折れた穂がお茶に入るようになったら、替えどきです
- 穂先が割れている:先が裂けると、お茶に細かい竹が混じります
- 全体がすぼまって戻らない:点てても泡が立ちにくくなります
- 黒ずみやカビ:見つけたら使わずに替えます
何回使ったら替える、という決まった数字はありません。 使う頻度も、点て方も、乾かし方も人それぞれだからです。上の状態が出てきたら替える、と覚えておけば十分です。
お稽古で使うものは、折れた穂が席で目に入ると困るので、早めに替える人が多いようです。家で飲むぶんなら、もう少し長く使えます。
替えのタイミングで困らないよう、予備を一本置いておくと気が楽です。
まとめ
- くせ直しは、乾くあいだ穂の形を保つための台
- 使わない考え方もある。乾きを優先するなら立てて干すという選び方も
- お稽古用は先生の教え方に従う。道具の扱いは流派と先生で違う
- 穂が傷む原因は、熱い湯・洗剤・底に押しつける・濡れたまましまうこと
- 乾かすときは穂先を下に、風通しよく、直射日光を避けて、乾ききってからしまう
- 穂が折れる、割れる、すぼまって戻らない、黒ずむ——これが買い替えどき
- 使用回数の決まった目安はない。状態で判断する